派閥を選ぶとき、こんなふうに思ったことはありませんか?
「ややこしい特殊能力を覚えるのは面倒。とにかくシンプルに、殴り合いで強い派閥がいい」
そんなあなたに、サルダック・ノ’ールはぴったり・・・、かもしれません。
この派閥のコンセプトはひとことで言えば、腕力。
宙戦も陸戦も、振るサイコロの出目がすべて+1される──ただそれだけ。搦め手も裏技もなく、初期テクノロジーすらゼロで始まります。盤面を読む力と判断力が、そのまま結果に出てしまう。そんな、ある意味いちばん正直な派閥です。
目次
サルダック・ノ’ールはどんな種族?

ノ’ールは、黄金に輝くサルダック星を回る灼熱の惑星クィナーラに暮らす昆虫種族です。海のない赤茶けた巨大惑星で、極地では宇宙からでも見えるほどの大嵐が吹き荒れています。強烈な雷撃と砂嵐は惑星全体で日常茶飯事──それでも彼らは地表にも地下にも都市を築き、平然と暮らしています。頑強、という言葉がこれほど似合う種族もそういません。
軌道上には宇宙ステーション網と大艦隊がひしめき、隣の惑星トレン’ラクからは氷を運ぶ輸送船団が絶えず発進しています。掘り出された氷は軌道上の液化プラントで精製され、甲虫のように膨らんだ太陽グライダーに乗ってクィナーラの地表へゆっくり降りていく。巨鯨のような輸送艦が戦闘艇を吐き出すさまは、巣を突かれて飛び出す怒れるスズメ蜂そのものだと言われます。
ノ’ールは自分たちを「母なる女王サルダック」の統治下にあると語りますが、これは半ば儀式的なもの。実際に女王に会った者はおらず、その存在を裏づける記録も星の外には残っていません。表向きの指導者は女王の特命大使ですが、その大使を選び、任期を決めているのは秘密結社「帷の種」──つまり実権を握っているのは彼らです。
そして種族の誇りが、精鋭部隊テックラー。南極地方の過酷な訓練で弱者は死に、生き残った強者だけがゴ’ームとなり、テックラー軍団の一員として全銀河に恐れられます。クィナーラがゆっくりと位置を変え、星々がかつての正しい星座を描くとき、蠅なすべき日が再来する──「帷の種」はそう信じているのです。
「恐怖は死だ。お前らのうちほとんどが死ぬ。母なる女王は、価値ある生贄に感謝することだろう」──ゴ’ーム・セク’クス
この、飾らず容赦のない気質が、そのままゲーム上の強さになっています。
派閥データ
母星
| 惑星名 | 経済力 | 影響力 |
|---|---|---|
| トレン’ラク | 1 | 0 |
| クィナーラ | 3 | 1 |
経済力の合計は4と、17派閥のなかでも高めの部類。逆に影響力は1しかないので、議題フェイズでの投票力は期待できません。「お金はあるけれど、発言力はない」──これがサルダックの立ち位置です。
なおこの高い経済力は、後で説明する「1ラウンド目の《研究》」という動き方に直結します。地味に見えて、実はサルダックの生命線です。
特産物は3個と普通です。
初期テクノロジー
なし。
はい、本当にありません。ここがサルダック最大の特徴であり、最大の弱点です。
拡張をすべて合わせても、初期テクノロジーゼロで始まる派閥はサルダック・ノ’ールだけ。他の派閥が1つ、あるいは2つの技術を持ってスタートするなか、サルダックだけが手ぶらで宇宙に出ていくわけです。
これがどれだけ痛いか。技術は前提条件を積み上げて研究していくものなので、スタート地点が0ということは、上位の技術に手が届くまで他派閥より丸々1手分は遅れるということ。しかもサルダックの派閥専用技術は前提条件が2個・3個、しかも色がバラバラです。実際に遊ぶと、派閥技術は1つ取れれば御の字、それも4ラウンド目ごろ。1ゲームが5ラウンドだとしたら、もう終盤です。
派閥能力がシンプルなので、公式ルールブックはサルダックを初心者におすすめしています。でも僕は、初心者にはおすすめしません。 覚えることが少ないのは確かですが、そのぶん「この派閥ならではの楽しさ」が薄く、初めてのトワイライト・インペリウムがサルダックだと、このゲーム本来の面白さを味わえないまま終わってしまう可能性があるからです。
(正直に言うと、僕自身も人生3回目のTIでサルダックを遊んで、まったく面白くなかったです😅 PoK時代もコミュニティでの評判は芳しくありませんでした。昨年出たTEのおかげでようやく「遊んでもいいかな」と思えるところまで来ましたが、それでも初心者にはまだ勧めません。)
初期ユニット

- 輸送艦 × 2
- 巡航艦 × 1
- 歩兵 × 5
- 宙軍工廠 × 1
- 対宙要塞 × 1
輸送艦2つと歩兵5体は、序盤から一気に陣地を広げていくには良いスタートです。歩兵5体は基本版でも多い方で、「陸戦の民」という設定によく合っています。
ただ、戦闘艇が1機もないのは正直つらい。送り出す輸送艦が丸腰になってしまうということです。片方には巡航艦を護衛につけられますが、巡航艦は遠くまで飛ばして近隣との関係づくりに使いたいユニットでもあるので、ここが悩みどころになります。
設定を読むと「輸送艦が戦闘艇を吐き出すさま」なんて描写までされているのに、戦闘艇ゼロ。もう少し戦闘艇を持たせてくれてもよかったんじゃないかな、と思ってしまいます。
派閥能力
無慈悲 ── あなたのユニットが行うすべての戦闘判定の出目に+1。
これだけです。
効果の範囲は広く、宇宙艦隊にも陸戦部隊にも適用されます。たとえば戦闘力9の戦闘艇や輸送艦が8で命中するようになり、戦闘力5の弩級艦が4で命中する。数字にすると地味ですが、1回の判定あたり命中率が10%上がることになります。
シンプルさは魅力です。ただ、これは「戦えば得をする」能力ではなく、「戦ったときに少し有利」というだけの能力でもあります。この違いは後の「プレイ方法」でしっかり掘り下げます。
また注意点として、これはあくまで戦闘判定にのみ適用され、ユニット能力には効きません。つまり〈宙砲〉〈爆撃〉〈対艇斉射〉は、この能力の恩恵は受けません。
派閥固有ユニット
「エクソトライリーム I」(ノ’ール弩級艦)
| コスト | 戦闘力 | 移動力 | 艦載数 |
|---|---|---|---|
| 4 | 5 | 1 | 1 |
特殊能力:〈耐久〉、〈爆撃〉4×2(通常の弩級艦は 5×1)
固有ユニットも、正直に言うと微妙です。通常の弩級艦との違いは〈爆撃〉のダイスが1個から2個に増え、値も1つ良くなっている点だけ。宙戦を勝ち残ったあと、陸戦が始まる前に相手の歩兵をもう1体多く倒せるかもしれない──というだけのものです。
もちろん「かもしれない」が積み重なれば陸戦は楽になります。悪くはない。ただ、他派閥の固有ユニットと比べたときに「わあ、これが使いたい!」となるかというと……というのが正直な感想です。
派閥専用技術
「エクソトライリーム II」(前提条件:青 × 2 + 黄 × 1)
| コスト | 戦闘力 | 移動力 | 艦載数 |
|---|---|---|---|
| 4 | 5 | 2 | 1 |
特殊能力:〈耐久〉、〈爆撃〉4×2、《直撃》のアクションカードでは破壊されない、各宙戦ラウンドの終了時にこの艦を自ら破壊することで、その星系の宇宙艦を2隻まで道連れにできる
改良すると移動力が2になり、《直撃》で一撃退場させられる心配もなくなります。そして何より、自爆して敵艦2隻を巻き添えにできる能力が付く。旗艦を含む大型艦を道連れにできれば、コスト4のユニットとしては破格の働きです。
「ヴァルキリー粒子被覆」(前提条件:赤 × 2)
陸戦のラウンド中、戦闘判定を行った直後、相手が1つ以上の命中を出していた場合、あなたは追加でもう1命中を発生させる。
相手が命中を出せば出すほど、こちらも余分に命中を返せるという反撃型の技術です。陸戦にかぎった効果ですが、〈無慈悲〉と組み合わせると歩兵の粘り強さがぐっと上がります。
さて、この2つ。どちらを取るべきか、これが本当に悩ましい。 「エクソトライリーム II」は宙戦を、「ヴァルキリー粒子被覆」は陸戦を強くする技術で、そのゲームで引いた目的カードが何を求めてくるかによって答えが変わります。両方持って損はしませんが、限られた技術開発の機会を一般技術の上位に回したほうが、実戦では役に立つ場面も多いです。
つまりサルダックの派閥技術は、どちらも悪くないけれど、必ず研究しなければならないものでもない。状況を見て柔軟に判断する必要があります。この「正解が決まっていない感じ」も、僕が初心者におすすめしない理由のひとつです。
旗艦
「ク’モラン・ノ’ール」
| コスト | 戦闘能力 | 移動力 | 艦載数 |
|---|---|---|---|
| 8 | 6 × 2 | 1 | 3 |
特殊能力:〈耐久〉、この星系にいる自分の他の宇宙艦艇の各戦闘判定の出目に+1
※戦闘能力の「6」は「無慈悲」込みで実質 5 × 2 になります。
旗艦はまずまず優秀だと思います。すでに全艦が〈無慈悲〉で+1されているところに、旗艦と同じ星系にいればさらに+1。合計+2です。弩級艦は3で命中し、輸送艦・戦闘艇・駆逐艦は7で命中するようになります。命中率としてはかなり大きな上振れです。
ただし考えどころもあります。もともと全艦に+1がかかっている派閥なので、そこまで宇宙艦を強くする必要が本当にあるのか、という話です。旗艦は結局1隻しか建てられません。終盤にどうしても取りたい星系がある、あるいは母星を狙われていてどうしても守り切りたい──そういう局面で建てるのがいちばん活きると思います。経済力に余裕があれば早めに建てても悪くはありませんが、盤面を見て「ここぞ」というタイミングを見きわめたいところです。
誓約書カード:テックラー軍団
陸戦の開始時に使用。その陸戦のあいだ、使ったプレイヤーのユニットの戦闘判定の出目が+1される。また相手がサルダック・ノ’ールだった場合は、サルダック側の出目が−1される。使用後、このカードはサルダック・ノ’ールのプレイヤーに戻る。
これは微妙な誓約書です。前もって誰かに売っておくと、そのカードでサルダック自身が殴られる危険があります。−1のペナルティ付きですから、なおさら痛い。
なので、いちばん賢い使い道は「他のプレイヤー2人が戦闘を始めたその場で、手番プレイヤーに売りつける」こと。即座に使ってもらう条件で渡せば、自分に返ってくるリスクがありません。
効果としては陸戦専用、しかも歩兵の出目+1だけ。これ単体で戦闘がひっくり返ることは多くないので、「うまくいけば交易品1個で買ってもらえるかも」くらいの軽い気持ちで売りに出すのがちょうどいいと思います。
基本的なプレイスタイル
サルダックには、「こう動けば勝てる」という定石が特にありません。プレイスタイルを縛るような特殊能力もなければ、盤面の常識をひっくり返すような固有ユニットもない。戦闘力が1強い、それ以外に宙戦・陸戦で使える技はないというのが実態です。良く言えばオールマイティー、悪く言えば無個性。
なので、やることはとてもシンプルになります。公開目的と秘密目的に向かって、まっすぐ突き進む。 それだけです。
ただ、ここに落とし穴があります。派閥能力が道を示してくれないということは、自分で毎ラウンド、盤面を読んで作戦を組み立てなければならないということ。今は誰と仲良くすべきか、どちらの方向に伸びるべきか、誰に戦争を仕掛けるべきか、あるいは仕掛けないべきか──その判断がそのまま勝敗になります。
「単純だから初心者向け」と言われがちですが、僕の考えは逆です。判断のすべてがプレイヤーに委ねられているぶん、経験者向けの派閥だと思っています。
派閥の良さを引き出す3つのポイント
① 1ラウンド目は《研究》を狙う
サルダックは初期技術ゼロなので、とにかく最初の遅れを取り戻すことが最優先です。
うれしいことに、サルダックは1ラウンド目に《研究》を取れば、主能力で技術を2回開発できるだけの経済力を持っています。母星の経済力が合計4、そこに他プレイヤーの《通商》で特産物をもらい、自分の巡航艦を誰かに近づけて交易品に変えれば、追加開発に必要な経済力6が届きます。母星の高い経済力がここで効いてくるわけです。
1ラウンド目に《研究》が取れなかった場合は、《画策》を狙って自分が議長になりましょう。 そうすれば2ラウンド目は必ず《研究》を確保できます。おまけに《画策》はアクションカードも引けます。派閥能力が薄いサルダックにとって、アクションカードは貴重な「特殊能力」の代わりになるので、これも決して悪い選択ではありません。
《研究》も《画策》も取れなかったラウンドは、母星の経済力を使って副能力にきちんと従うようにしてください。技術の遅れは、放っておくと最後まで響きます。
② 技術は青の高度技術と「輸送艦 II」を目指す
サルダックには「この技術を取ると化ける」という決まった正解がありません。なので、一般に強いと言われている技術を素直に追うのが結論になります。定番は青(推進)の高度技術です。
- 重力ドライブ ── 戦術アクション中、宇宙艦艇1隻の移動力が+1される
- 艦隊兵站 ── 実行フェイズの自分の手番で、アクションを2つ実行できる
- 光/波動デフレクター ── 他プレイヤーの宇宙艦艇がいる星系を通過できる
どれも派閥を問わず強力な技術で、特に「艦隊兵站」は手番の密度が丸ごと変わります。

そして青を研究していくと、「輸送艦 II」が改良できるようになります。移動力と艦載数が上がり、戦闘に戦闘艇や歩兵をより多く連れていけるようになる。これがサルダックではとりわけ大きい。
理由はこうです。通常、輸送艦も戦闘艇も戦闘力は9で、宙戦への貢献はほとんど期待できません。でもサルダックなら、これらもすべて+1されて8で命中します。旗艦がいれば+2で7です。 つまりサルダックは、高価な弩級艦を並べるより、安い宇宙艦を大量に用意して数で押し切るほうが経済的に有利な派閥なのです。〈無慈悲〉の恩恵は、高い艦より安い艦に乗せたときのほうが割がいい、と覚えておくといいでしょう。
なお青を集めていれば、黄色の専門性を持つ惑星を押さえたときに「エクソトライリーム II」の前提条件も揃います。ただ、そのためにわざわざ黄色を研究する余裕は普通のゲームにはないはずです。派閥技術は「惑星の専門性の運が良ければ取る」くらいに考えて、狙って追いかけなくてよいと思います。
③ わざわざ戦いをふっかけない
派閥能力も派閥技術も戦闘力を上げるものなので、「サルダックはたくさん戦えばいい」と思いがちです。でも僕は、むしろ逆だと思っています。
ネクロウィルスのように「戦闘に勝つと得られるもの」がある派閥なら、戦う理由があります。でもサルダックには、戦闘に勝ってもご褒美がありません。 出目が+1されるのは、あくまで「戦ったときに少し有利」というだけ。戦えば戦うほど自分のユニットも減りますし、殴った相手からは恨まれます。
なので「無慈悲」は攻めの能力というより「こいつと戦うと面倒くさそうだな」と思わせる抑止力として捉えるのがいいでしょう。本当に必要なときだけ戦う。それ以外は目的の得点に集中する。これがサルダックの正しい距離感だと思います。
勝ち方の方向性

- 第1ラウンドは《研究》を狙う。 取れなければ《画策》を取って議長になり、第2ラウンドの《研究》を確保する。
- 毎ラウンド、公開目的を必ず得点することを最重要事項にする。 派閥能力に頼れない以上、得点の取りこぼしがそのまま敗因になります。
- 技術は基本的に青の高度技術まで突き進み、「輸送艦 II」も押さえる。 派閥技術は運が良ければ取る程度に。
- ユニットは輸送艦+戦闘艇+歩兵を中心に構築する。 「無慈悲」の恩恵がもっとも大きいのは、安くて数を出せるユニットです。
- 「無慈悲」を過信しない。 戦闘は必要最低限にとどめ、抑止力として使う。
初心者向けアドバイス
- 初心者であれば、正直、他の派閥を選ぶことをおすすめします f(^^;) 公式は初心者向けと言っていますが、TIの面白さを味わうという意味では他にもっと良い選択肢があります。
- それでもサルダック・ノ’ールを遊ぶなら、派閥技術のことはあまり意識せず、公開目的と秘密目的の達成だけを目指して単純に頑張るのがいちばんです。
- 1ラウンド目の《研究》だけは意識してください。ここでつまずくと、最後まで技術で後れを取り続けます。
- 「戦闘が強い派閥だから戦わなきゃ」と思わないこと。戦わずに得点できるなら、それがいちばん強い動きです。
- 誓約書「テックラー軍団」は、自分に跳ね返ってこないタイミングでだけ売りましょう。
ひとこと評価
特殊能力は出目+1だけ。実力がそのまま出る武闘派!
| 評価軸 | 評価 |
|---|---|
| 初心者おすすめ度 | ★☆☆☆☆ |
| プレイの複雑さ | ★☆☆☆☆ |
| 攻撃性 | ★★★☆☆ |
| 個性的か | ★☆☆☆☆ |
サルダック・ノ’ールは、TIのなかでも「派閥のギミックで遊ぶ」楽しさがいちばん薄い派閥です。固有ユニットで盤面をかき回したい人や、能力のコンボを組み立てたい人には、かなり物足りなく感じるはずです。
でも逆に言えば、勝敗のほとんどが自分の判断で決まる派閥でもあります。派閥の力に頼らず、盤面を読んで、外交して、得点を積み上げていく──その純粋なプレイヤー同士の勝負が好きな人には、これ以上ないくらい正直な相棒になってくれると思います。
もしこの記事で間違っている情報や、「ここはこうじゃない?」という気づきがあれば、ぜひコメントで教えてください。みなさんの知識や経験も取り入れながら、一緒により良い記事にしていきたいと思っています!







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